『もろく崩れやすい山』利尻山における登山道整備プロジェクト
北海道

『もろく崩れやすい山』利尻山における登山道整備プロジェクト

支援プロジェクトのオーナーのロゴ
利尻トレイルワークス
支援総額
1,001,000
目標金額 500,000円
200%
支援者
5,113
残り
終了

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  • 概要

このプロジェクトの概要

  • もろく、侵食の激しい火山礫(れき)であるスコリア層の登山道を整備することで、利尻山の自然環境の回復を図ります
  • 利尻山で登山道の維持管理等を行っている株式会社トレイルワークスが本プロジェクトを実施します
  • クレジットカード(一口:300円〜)または8,000 DOMO(日本円で80円相当)で本プロジェクトを支援できます

活動報告

ご支援のお礼

2023.10.31

もろく、崩れやすい火山性地質の利尻山を、登山者と一体となり保全していきたい

島そのものが山に見える、利尻山。アイヌからは、その姿を高い・山(島)を意味する「リィ・シリ」と呼ばれていました。(画像引用元:A.トミーさん)

日本最北の百名山として知られる北海道の利尻山(1,721m)は、その美しい姿から「利尻富士」とも呼ばれ、全国各地から毎年約8,000人の登山者が訪れる人気の山です。

利尻山は、固有の高山植物(リシリヒナゲシやボタンキンバイなど)が数多く自生する山としても知られ、1974年には、利尻礼文サロベツ国立公園に指定されています。

利尻山の固有種、リシリヒナゲシ。

毎年多くの登山者が登る利尻山ですが、登山道は火山性の脆い地質であるスコリアでできている箇所が多く、登山道荒廃が大きな問題になっています。

赤茶色の火山噴出物であるスコリアは、指で触れるだけで崩れるほど脆く、極めて侵食に弱い地質として知られています。そのスコリアが露出する利尻山頂付近を中心に、登山道の荒廃が一気に拡大したのが1990年代のことです。

山頂付近のスコリアが露出し、侵食が進行する登山道。

この時期は、百名山ブームの真っ直中、年間2万人以上の登山者が登っていたと推計され、その後、2005年に初めて補修の手が入るまで全く登山道の整備がなされていない状態でした。

この間に、スコリア層が登山者の踏圧と雨水等の流水に晒され続け、登山道が大きく侵食されてしまいました。また同時に、周辺植生の裸地化や、登山道上に流出したスコリアによる歩行性・安全性の低下など、10年ちょっとの間に、甚大なダメージが拡がってしまったのです。

山頂直下の、通称「3mスリット」と呼ばれる場所(2006年)。

現在、補修を進めている山頂付近の「3mスリット」と呼ばれる場所も、やはり同時期に大きく侵食が進んだ場所です。登山者の踏み跡と流水によって、人の背丈以上に地面がえぐられているその景観は、利尻山の登山道荒廃の深刻さを象徴しています。

そして、1990年代に起きた侵食を、30年を経た今もなお治し続けなければならないところに、『崩れ続ける変化の早い山』利尻山における登山道補修の難しさが現れています。大規模な荒廃箇所を治している途中に他の場所で新たな荒廃が生まれるので、補修が追いつかない状態なのです。

一方、昨年度からは、この3mスリットの補修を一般の登山者にもサポートしてもらっています。具体的には、黒いコルゲート管というパイプを立て、その中にスコリアを詰めることで侵食箇所をかさ上げするのですが、一般登山者にこの詰めるためのスコリアを運搬してもらう作業をお願いし、多くの協力を得ています。

利尻山の登山道補修における長年の課題は、深刻な荒廃に対して補修の速度が追いつかないことにありますが、登山者の協力によって、一筋の光明を見せています。

2022年に整備を実施した、3mスリット。侵食箇所を“かさ上げ”し、安定した路盤をつくっています。
コルゲート管の中に封じ込められたスコリアは、いくら踏まれても崩れません。コルゲート管のスコリアは水を吸い込んでくれるので、流水対策にもなり一石二鳥の役割を果たしています。
資材運搬に登山者の協力を得る試みは、予想以上の賛同と協力を得られています。

今回のプロジェクトでは、支援金を元に整備に必要な機械を購入し、補修のスピードアップを図ります。また、一般登山者や管理関係者の方などに実際の登山道補修に参加していただくイベントを開催し、作業体験を通して利尻山の実態や課題について、もっと詳しく知っていただける機会を作りたいと考えています。

皆様の温かいご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

次の荒廃が迫る、鴛泊登山道上部(沓形登山道との合流点直下)。

これまでの、利尻山の登山道整備について

沓形(くつがた)登山道上部の登山道整備では、施工当初(写真左、2010年)は見た目の異質感が大きく、批判を受けることもありましたが、10年経てば写真右(2021年)のように景観は回復。スコリア層が崩れる心配もない状態になりました。

利尻山の山頂付近で行っている登山道整備は、自然以外の資材を持ち込み整備を行っているため異質感が大きく見えるかもしれません。しかし、行っていることは山麓部で実施している自然の物を使って整備を行う「近自然工法」による補修と同じです。

山頂付近の登山道整備では、植物の芽生えを阻害する土砂流出を補修によって止め、植生回復の基盤を作ってあげることが目的です。そのために、まず登山者が歩きやすい道を作ることで、登山道周辺に踏圧の影響が及ばないようにしています。

こうした補修を施すことで、スコリアの露出する裸地斜面でも、植物の根が張り、安定し始めます。このように自然が自らの力で安定する好循環を取り戻すことを目指すのが利尻山の登山道整備です。

施工前(2019年)利尻山鴛泊登山道4合目付近。土壌侵食によってむき出しになった木の根を避け、段差の少ない場所を選ぶ踏み跡により、登山道の侵食が進行していました。
利尻山鴛泊登山道4合目付近の登山道整備2年後(2021年)の様子。現地の石を用いた補修は、現在では、人の手が入ったことが分からないほど自然景観に馴染んでいます。
コルゲート管の上部に芽生えたマルバギシギシ。植生回復の始まりは、このような小さな芽生えから始まります。
黒いコルゲート管は数年かけて、次第に目立たなくなります。植物の回復する速度に合わせて、ゆっくりと優しい目で見守ってください。

支援金の使い道について

本プロジェクトを通して実施したいことは2つです。まず1つ目は、整備に必要な機械を購入し、日常業務である草刈りのペースアップを図り、メイン業務の登山道補修にかけられる時間を増やすことです。従来、一部のスタッフ以外はチェンソーや刈払機を使えず、鎌や鋏などの手工具を使用して草刈りを行っていたので、機械化は大きな時間短縮効果をもたらします。

次に実施したいのは、利尻山の現状や登山道補修について、登山者や管理関係者と理解を共有する機会を作ることです。関係機関や一般登山者に参加いただく補修イベントを予定しています。イベント開催は株式会社トレイルワークスのインスタグラムやYAMAP公式アカウントで呼びかけを行う予定です。

この機会に、ぜひアカウントをフォローいただければ幸いです。

≫ YAMAP公式アカウント:利尻トレイルワークス

≫ Instagram:利尻トレイルワークス

【目標金額:50万円】

  • ・草刈り用機械の購入費(ヘッジトリマー、バッテリー、充電器):30万円
  • ・補修イベントの指導員費:15万円
  • ・YAMAPファンディング運営費:5万円
※ 目標金額を超えるご支援をいただいた場合には、追加の用具購入費用等に使わせていただきたいと考えています。
地元関係機関との合同整備の様子。

株式会社トレイルワークスについて

山頂直下の補修現場まで、整備に必要なコルゲート管を運ぶために標高差1,500mの道のりを歩荷するスタッフ。

株式会社トレイルワークスは、2012年に利尻島で生まれた登山道の維持管理を主業とする会社です。代表の岡田は、元々、環境省の利尻地区アクティブレンジャーとして2006年に利尻山の管理に携わりはじめ、以降、利尻山の移り変わりを見てきました。

登山道補修だけではなく、携帯トイレ用ブースの維持管理や植生調査、植生復元、地元関係機関の集まる利尻山登山道等維持管理連絡協議会との連携による情報発信や、マナーの普及啓発にも取り組んでいます。また、各地での登山道調査や補修講習会も実施しています。

≫ 株式会社トレイルワークス:公式サイト

登山時に守っていただきたい、利尻ルール

自然豊かで、山頂からの景観が美しい利尻山に、ぜひ足を運び楽しんでいただきたいのですが、登山時に守って欲しい「利尻ルール」について説明させていただきます。

【その1】携帯トイレを持って入山してください。 利尻山のコース上には携帯トイレ専用ブースが5箇所に設置されています。あわせてご利用ください。

【その2】ストックを利用される方は、先端部分にキャップをしてください。 登山道の侵食軽減にご協力願います。

【その3】植物の上に座らない、そして踏み込まないようにしてください。 植物は登山道を侵食から守る切り札です。地味な草でも大事にしてあげてください。

≫ 「利尻ルール」:環境省

荒廃が進む登山道の整備を進めても、利尻山を登山される一人ひとりが、自分の一歩が山へ与える影響について正しく理解し、自然環境に配慮した行動を取ることがなければ、根本的な解決には繋がりません。 自然と人とのより良い関係作りのために、「できることから始めてみる」という意識を持って登山を楽しんでいただけたらと思っています。

登山道整備に必要な土嚢を運搬し終えたスタッフたち。

支援の流れ

  • プロジェクトを支援する(DOMO支援は1回限り)

    クレジットカードによる現金支援(複数回支援可)、または8,000 DOMO(1回限り、日本円で80円相当)にて、「『もろく崩れやすい山』利尻山における登山道整備プロジェクト」を支援することができます。

    支援金は、整備に必要な機械購入費や、登山道補修のイベントにかかる費用に充てられます。

  • プロジェクトの活動開始

    2023年8月より、『もろく崩れやすい山』利尻山における登山道整備プロジェクトがスタートします。

  • 活動報告のお知らせ

    プロジェクトの活動報告を、公式アカウントとYAMAPのダイレクトメッセージにてお知らせいたします。